【年間200件の事例】から学ぶ「孤独死対処方法」

特殊清掃の問題点「役に立たない資格ビジネス」の存在

修了証書

MEMO

特殊清掃とは、一般に孤独死、孤立死と呼ばれている死亡現場や、事件、事故、自殺等の死亡現場で遺体の痕跡を取り除き、原状回復する清掃作業のこと。

このページでは、特殊清掃業界では今、特に何が問題なのかとその解決策について語ります。

1.特殊清掃は「臭いが取れない」業者の増加が最大の問題

neo-SIGMA
 特殊清掃業界には、非常に大きな問題があることをご存知でしょうか?
特殊清掃を行うための資格を発行している団体(以下、A団体)があり、資格取得者も結構多いのですが、その資格を取得しても特殊清掃をきちんと行えないということです。
 A団体の教材を読むと、書いてあることは、空気中には細菌があるので除菌した方がよいとか、徐菌するには二酸化塩素が良いとか、そうした基本的なことばかりです。
「床の上で亡くなっていた場合はどうしたらよいのか」、「トイレの中で亡くなっていた時にはこのようにすればよいとか」、「床下まで体液が染み込んだ場合に、根太の場合は?パーチクルーボードの場合は?コンクリートスラブの場合は?」あるいは「ジプトーン天井が臭い場合の対処方は?」などそうした具体的な清掃法、腐敗臭の消臭方法については、まったく書かれていません。

注意

そのためこの資格を取得しても、一般ユーザーが求めるきちんとした特殊清掃はできないのです。

2.特殊清掃の資格なのに、臭いの取り方を教えられていない

脱臭マイスター資格セミナー

 特殊清掃をきちんと行っている私の知り合いの業者の人たちから、「2〜3年前から他社が行った特殊清掃のやり直しが異常に増えている」の声を多く聞いております。
特殊清掃では、臭いを取ることが一番求められます。ところが、これはA団体の資格を取得した業者に限ったことではありませんが、臭いをきちんと取ることができない業者が多いのです。逆を言えば、臭いをきちんと取ることができない業者が大半なのです。
上記の説明のように、A団体の資格取得用テキストや、資格を取得して会員になってもらえるマニュアルなどでも、臭いの取り方(具体的な施工方法について)書かれておりません。
つまり、臭いの取り方を教えられていない民間資格なので、全く役に立たない訳です。
資格ビジネスが手っ取り早く会員を多く集められて、収益が高いだけの理由で始められた訳で、同業者の多くが資格を発行する団体の本質を見抜けずに加盟している現実が存在しております。

3.住宅オーナーや不動産管理会社には死活問題である

不動産管理会社

 やり直しを求めるのは、アパートやマンションなどのオーナーや管理会社が多いです。臭いが残っているところには、誰も入居したくないですから、オーナーや管理会社としては、孤独死などの痕跡は残さず、無かったかのようにして欲しいわけです。
臭いをきちんと取れなかった業者にクレームをつけて、やり直しさせても同じことですから、きちんと出来る業者にやり直してもらうオーナー、管理会社が多いのです。
しかし、それだとユーザーにしてみれば、出費が多くなってしまいます。ユーザーに余計な出費をさせているわけですから、非常に大きな問題です。

不動産管理会社

そのことをA団体はどう思っているのでしょうか?

代表

実は、私はかつてA団体の役員Bに対して、資格取得の教材は現在の現場には通用しないということを散々言いました。
でも、会員は増えているのでこのままではいいではないか、といった理由で私の意見は聞き入れられませんでした。

 

不動産管理会社

そうやって意見することが、物事の流れを変える第一歩に思います。

代表

また、A団体は今年の秋に、特殊清掃のマッチングサイトを立ち上げ、A団体のトップは、登録事業者を集めるために、SNSなどで「一緒にやりましょう」などと盛んに煽りたてていました。
私は以前、役員Bに電話して「会員を増やすことより先に、きちんと孤独死などの痕跡は残さずに施工できる業者を育てた方が良いのでは?」ただ会員を増やすだけではユーザーの被害が増えるだけなので、ちょっとおかしいのではないか」と言いました。

不動産管理会社

なるほど、マッチングサイトは出来るだけ避けて業者選定しなければならないですね。

代表

すると、役員Bは「トップは金儲けに走っているので、進言しても聞き入れてもらえない」と答えました。
それが本音かどうかは分かりませんが、いずれにしても私の電話には耳を傾けてもらえませんでした。

不動産管理会社

一般ユーザーの欲求を満たすには、ただ会員を増やすだけでは駄目で、孤独死などの痕跡は残さずに施工できる業者を育てることが資格を発行する団体の本来の役割に思います。
こうしたやり取りからして、A団体は、資格取得会員やマッチング登録会員を増やすことによって、ユーザーから特殊清掃の依頼を増やして手数料を稼ぐことしか考えておらず、臭いがきちんと取れるかどうかまでは考えていないと受け止めざるを得ません。

4.特殊清掃業界にも死活問題である

代表

臭いがきちんと取れないので、ユーザーに二重の出費をさせているだけでなく、臭いがきちんと取れないことを分かりながら、そういう業者をどんどん増やそうとしているということになります。
そして、被害が広がっていくと、特殊清掃業界全体の信頼性も無くなりますから、我われ業者にとっては死活問題なのです。

不動産管理会社

この大問題を解決していくには、どのようにしたら良いのでしょうか?

代表

特殊清掃業者が、高い紹介手数料を払ってでも、A団体のような大きな問題があるところに入ろうとするのは、仕事がもらえるからです。事業を始めたばかりの業者は、特にそうです。
ですから、他のまともな団体も、そうした仕組みをどんどんつくっていけば良いと思うのです。A団体と同じだけの仕事を業者に紹介できるようになったら、あとは仕事内容で比べますから、いい加減な団体は自ずと弱体化していくはずです。

5.特殊清掃業者に仕事を紹介する受け皿となれる団体は、すでにある

  1. 日本特殊清掃隊
  2. 一般社団法人日本除菌脱臭サービス協会
  3. 一般社団法人家財整理相談窓口
  4. 一般社団法人特殊案件施行士協会
  5. 一般社団法人 事件現場特殊清掃センター
特殊清掃と災害復旧に特化した団体としては、この夏に「日本特殊清掃隊」という団体ができました。

代表

私のように、A団体の行っていることに意見を言ったり、不満を示したことによってA団体から除名された人や自ら退会された業者が多くいます。
その人たちが自然と集まって意見交換するようになり、いろいろ話し合った結果、「本当に世の中に役立つ特殊清掃を提供していこう」という理念で一致し、新しい団体を立ち上げました。

同業のSさん

日本特殊清掃隊には、どのような特徴がありますか?

代表

一番の特徴は、「完全消臭」ということを謳っており、完全消臭を履行できるエキスパートの会社だけが加盟しているということです。A団体を除名されたのは、そういう会社が多いのです。
A団体は、完全消臭ではありませんし、そう謳うとまずいので、「完全消臭」という言葉は使っていません。
また、日本特殊清掃隊では、加盟各社が日々情報交換し、最新の技術、ノウハウを共有しています。この点でも、A団体に比べて格段に優れています。

同業のSさん

団体が発足したばかりですが、加盟社に仕事を紹介するという面ではいかがでしょうか?

代表

つい最近の例ですと、これは水害復旧の案件ですが、団体に加盟している1社に多数の依頼がありました。1社ではこなせないので、加盟各社に割り振って処理しました。
完全消臭を履行できる業者は、全国にまだ1割程度しかいませんし、災害復旧できるところはさらに少ないので、今後、日本特殊清掃隊への依頼はもっと増えてくると思います。

同業のSさん

そのほか、特殊清掃事業者に仕事を紹介する受け皿となる団体はありますか?

代表

私が所属している団体で言いますと、「一般社団法人日本除菌脱臭サービス協会」があります。
孤独死などに限らず、脱臭全般の事業者が集まった団体ですが、「孤独死脱臭マイスター」という資格も発行しており、孤独死対応にも力を入れています。
受講料は、一般向けは5万円(会員は3万円)で非会員の場合、A団体より2万円高いですが、カリキュラムの内容は数倍良くできており、コストパフォーマンスはこちらの方が断然高いです。
仕事の紹介という面でも、不動産管理会社などと提携しており、災害復旧の依頼はありますし、特殊清掃の依頼もたまにあります。

代表

その他、「一般社団法人家財整理相談窓口」にも所属しています。この団体は、準会員と正会員に分かれており、厳しい審査によって、ユーザーが満足する仕事ができると認められた会社のみを正会員にしています。
団体名の通り、ユーザーからの相談窓口ですが、変な業者に当たりたくないので良い業者を紹介してほしいという人もいますので、そういう人には正会員の業者を紹介しています。良い業者を紹介してほしいという相談も増えてきています。
両団体とも、加盟会員への仕事の紹介ということにも力を入れており、紹介は今後さらに増えていくと思います。

同業のSさん

それだけ特殊清掃に関わる団体があるなら、会員数の多さとか団体の規模ではなく、ユーザー想いの団体を選びたいですね!

6.「特殊清掃の問題「役に立たない資格ビジネス」の増加」まとめ

  1. 特殊清掃は現場作業に役立たない資格が存在することを認識する。
  2. 一般ユーザーの問題解決を意識せずに、資格ビジネスで利益だけを考えている団体が存在していることを認識する。
  3. 同業者の多くが資格を発行する団体の本質を見抜けずに加盟している現実が存在あることを認識する。