【年間200件の事例】から学ぶ「孤独死対処方法」

生活保護者を受け入れる場合の注意点

生活保護者と聞いて、皆さまはどのようなイメージを持たれるでしょうか。
生活保護とは、厚生労働省のHPから抜粋すると「生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長すること」を目的としたものです。何かしらの理由があって生活保護を受けなければ生活をしていくことができない方々が生活保護を受けることになります。
そんな生活保護者の方を受け入れる際には、注意をして置かなければいけない点がいくつかあります。その中でも、孤独死があった場合という観点で注意点を記載していきます。

1.孤独死という観点での注意点は大きく3つ

様々な注意点はありますが、大きく3つにわけられます。

  1. 契約の際の注意点
  2. 日々の生活での注意点
  3. 生活保護課の方との関わりでの注意点

1-1.契約の際の注意点

居住者が孤独死をしてしまった場合、孤独が故に発見が遅れてしまうことが多いです。死亡から時間が経ってしまった孤独死現場では、独特の強烈な腐敗臭とひどい汚れが染み付いてしまっています。
そんな現場を綺麗に清掃するための原状回復は、通常の掃除では綺麗にすることができず、殺菌効果の高い様々な薬品を使用した消毒や清掃、消臭をおこなわなければ綺麗にすることが出来ません。

注意

原状回復にかかる費用は基本的には賃貸契約時の連帯保証人、もしくは相続人となります。

生活保護を受けて賃貸物件に居住をしている人のほとんどが契約時の連帯保証人を親や兄弟姉妹にしています。
したがって、生活保護を受けている居住者が孤独死をしてしまった際には本人の連帯保証人である親や兄弟姉妹に連絡をとるか、本人の相続人に連絡を取ることとなります。
しかし、生活保護を受けている方は、親族等の支援が受けられないことが前提となっています。
したがって、親や兄弟も何かしらの理由から、生活保護をうけていたり、しっかりとした生活を受けることが出来ていなかったりする可能性があります。
そもそも既に亡くなってしまっている可能性もございます。
生活保護を受けている方であれば、相続人がいるかどうかもわかりません。
つまり、原状回復を行うのに充分な費用を支払うことが出来ない可能性があります。

仮に連帯保証人や相続人が原状回復費用を支払えない場合は、大家、家主、貸主が費用を負担することとなってしまいます。これはなるべく避けたいものです。
居住者を受け入れる際には、連帯保証人の身元をしっかりと確認をされると思いますが、その居住者が生活保護を受けている方である場合には特に注意が必要です。
相続人のご連絡先などもしっかりと確認をしておくことが大切です。
そして、契約時だけ注意をしておくということでは充分ではありません。
契約時には問題がなかったとしても、その後転居や死亡などの理由で連絡が取れなくなってしまう可能性も大いにございます。
契約後も定期的に連絡を取り、常に連絡が取れるような状態にしておきましょう。

1-2.日々の生活での注意点

生活保護を受けている方は、何かしらの理由があって生活保護を受けておりますので、周りの方々との関係が少ない方や、家から外出をなかなかされない方も多いことでしょう。
したがって、家の中で孤独死が起こっていたとしてもご遺体の発見までに長い時間がかかってしまうことが多いです。
発見までに時間がかかってしまったご遺体は、腐敗が進んでしまっていることが多く、住宅への被害状況も悲惨な状態になってしまいます。周りの居住者への被害や原状回復にかかる費用も膨れてしまうでしょう。
死亡をしてしまったことに早く気づくことができれば、その分被害も小さく抑えることが出来ます。

周りとの関係が希薄になりがちな生活保護者の方が部屋の中で孤独死をしてしまったことにいち早く気づくためには、日々、大家さんが生活保護者の方の生活を気にかけておくことが大切です。

MEMO

例えば、2ヶ月に一回お電話などでご連絡をしたり、決まった時間にご挨拶をしたりなど、定期的にご連絡を取るようにしましょう。
他にも、その方の生活スタイルをしっかりと把握しておくことで何かしらの異変に気づきやすくなります。普段と異なる様子を確認したら即座に連絡をしましょう。
違和感があったにも関わらずそのままにしてしまうと、被害が拡大し、悲惨な状況になってしまいます。

生活保護を受けている方も、大家が親切に接してくださることは嬉しく感じるはずです。親しくなることで、さらに居住者の情報を得ることができるので、万が一の際の早期発見、即対応につながります。
生活保護を受けている居住者の方には、通常の居住者の方よりも意識的に注意を向けるようにしておいたほうが良いです。

1-3.生活保護課の方との関わりでの注意点

MEMO

生活保護者の方は、生活保護課の方からのサポートも受けています。
生活に必要な扶助として、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の8種類の扶助を受けています。
生活保護を受けている居住者は、住宅扶助の支援を受けているので家賃の滞納は少ないです。
保護課から生活保護者へお金が振り込まれてから、大家のもとへ振り込まれますので、生活保護者がお金を使いすぎてしまった場合などは滞納が起こる可能性もあります。
心配があるようでしたら、生活保護課から直接大家へ振り込んでもらうようにお願いすることも出来ますので、家賃滞納のリスクを抑えることが可能になります。
しかし、これが孤独死の発見を遅らせてしまうことがあります。

生活保護を受けている居住者の方との関係が希薄な場合、基本的に自然に発生する大家とのやり取りはありません。
毎月の家賃の支払いや光熱費の支払いが滞納されていれば、大家から連絡をすることになりますが、上記のように保護課から家賃が直接支払われるような手続きをしていたり、光熱費が口座から自動引落になっていたりした場合は滞納が起こることはありません。

したがって、通常通り生活をしていると思っていたら、実は気づかぬうちに亡くなっていたということが起こり得るのです。これは周囲との関係が希薄になりがちな生活保護者だからこそ起こる可能性がある事象です。

生活保護課でも生活保護者のサポートや安否確認は行っておりますが、生活保護実施要領には、少なくとも年に2回以上の訪問と記載されています。半年に1回の訪問では、居住者に万が一のことがあったとしても気づくのが遅れてしまいます。

MEMO

このように生活保護課のサポートに任せてばかりだと、生活保護者の以上に気づかず、大家の負担が大きくなってしまう可能性があります。
生活保護課の方々のサポートは心強くはありますが、孤独死が起こってしまう可能性も考えて自ら動くような姿勢も非常に大切です。
生活保護者の方々は普通の居住者の方々と比べて、手厚いサポートがあるので、大家は何もしなくて大丈夫と考えているかもしれませんが、普通の方よりも意識的に生活を見るようにしないと気づいたら亡くなられていて、その孤独死現場は悲惨な状態になってしまう可能性があることを知っておいてください。

2.「生活保護者を受け入れる場合の注意点」まとめ

生活保護者を居住者として受け入れる際には、以下の点について注意をしておくと、孤独死があった場合にスムーズに発見をすることができます。

  • 連帯保証人や相続人は契約時にしっかりと確認するだけでなく、いつでも連絡を取れるような状態にしておかないと、原状回復費用を負担しなくてはならない可能性が高くなること。
  • 日々の生活から関わりをもつようにしておかないと、孤独死現場の発見が遅れてしまう可能性があること。
  • 生活保護課のサポートによって、死亡の発見が送れる可能性があること。