保証人制度や連帯保証人の責務について、なんとなくは知っているものの詳しくはなく、不動産業者から店子の入居時に簡単な説明を受けたのみといった方も少なくないでしょうか。
または、家族や親族が家を借りる際の連帯保証人になってくれと頼まれたものの、その責任の範囲について不安に感じていらっしゃる方も多いでしょう。
保証人と連帯保証人の違い、またその責務について仔細を知らないまま、容易に捺印や署名はできないと思いつつ、ご身内のことだけに無下にはできないと考えられてお悩みかも知れません。
多くの場合、賃貸契約においての連帯保証人の責務が問題になるのは、賃料の支払いに際してです。
延滞や賃料未払いなどは、貸主である大家の方にとっては身近なリスクです。
そのため大家の方にとっては、契約時には連帯保証人の財産状況がもっとも気になる事項でしょう。
それでは、以降、保証人の制度についてみていきましょう。
1.保証人制度、連帯保証人の責務についてお調べですか?
保証人制度や連帯保証人の責務について、なんとなくは知っているものの詳しくはなく、不動産業者から店子の入居時に簡単な説明を受けたのみといった方も少なくないでしょうか。
または、家族や親族が家を借りる際の連帯保証人になってくれと頼まれたものの、その責任の範囲について不安に感じていらっしゃる方も多いでしょう。
保証人と連帯保証人の違い、またその責務について仔細を知らないまま、容易に捺印や署名はできないと思いつつ、ご身内のことだけに無下にはできないと考えられてお悩みかも知れません。
大家の方にとっては、契約時には連帯保証人の財産状況がもっとも気になる事項でしょう。
しかし他にも、とくに一人暮らしを前提とした賃貸契約の連帯保証人には意外な責任が発生することがあります。
2.賃貸物件にて「孤独死」「孤立死」の事態が発生した際の対処
近年問題となることが多いのは、賃貸物件にお一人で住んでいた方が亡くなられ、「孤独死」「孤立死」の事態が発生した場合の対処です。
凄惨な現場を発見することのショックもさることながら、その後の部屋の片付けや修繕にかかる費用の負担、諸手続きや手配の必要についても、責任の所在が気になるところです。
お一人で住んでいた方が亡くなられて発見されるまでには時間がかかっているケースが多く、その結果、ご遺体由来の損傷や影響、独特の死臭のしみこみが家財道具だけでなく家屋の建材や内装に及んでいます。
これらは通常賃貸物件の退去時に行われるハウスクリーニングの範囲では対応できません。
残されたご遺品を片付け、通常のハウスクリーニングを施しただけでは、臭いやご遺体由来の損傷のため、その部屋を次の借主の方にそのまま貸すことはきわめて難しい場合がほとんどです。
こういったご遺体由来の損傷や影響が見られた部屋の清掃、原状復帰を行うには、特殊清掃と呼ばれる専門技術を持った清掃業者による作業が必要です。
借主本人が死亡しているため持ち主のない家財道具、部屋に残ったご遺品の整理や処分も急務でしょう。
さらに、ご遺体由来の損傷や影響が見られた部屋の原状復帰のためには、特殊清掃とは別にリフォーム工事が必要となることもあります。
特殊清掃は感染症の危険や独特の死臭の中での作業となるため、必然的に大掛かりな設備や装備を必要とすることが多く、その費用は通常賃貸物件の退去時に行われるハウスクリーニングよりはるかに高額になります。
実際の作業では、特に臭いの程度の把握や除去のため、壁や床を清掃するだけでなく、建材をはがしたり、特殊なオゾン脱臭機を使用する必要があります。
そのため、「孤独死」「孤立死」の事態の発生した部屋の片付けや修繕にかかる費用は、店子が入居時に納めた敷金の範囲で納まらないケースが多いです。
無論、借り主の店子本人が死亡しているため、この費用の直接取立てはできません。
このように、賃貸契約時の連帯保証人というと、賃料の支払いについての責任をまず思い浮かべますが、「孤独死」「孤立死」の事態が起きた場合、その部屋の原状復帰の費用を支払うのも連帯保証人になります。
通常、部屋の借り主が「孤独死」「孤立死」する事態を未然に防ぐ義務が連帯保証人には発生していますから、それを怠った結果のとるべき責任として原状復帰の費用負担が発生します。
「孤立死」「孤独死」の発生そのもの、またその凄惨な現場は非常にショックを感じる事態ですが、同時に連帯保証人や貸主である大家にとっては金銭的負担についても非常に悩ましい問題の発生となります。
費用負担について、連帯保証人と貸主である大家の間でトラブルになることもあるでしょう。
それでは、賃貸物件の連帯保証人に発生する義務、また連帯保証人を定義する保証人制度の詳細、また周辺の制度についてご説明いたします。
3.保証人制度とは
一般の方が保証人制度の存在を意識するのは、金銭の貸し借りが行われるときや、賃貸物件の契約を結ぶ際でしょう。
保証人とは、日本の民法によると、保証債務を負う人のこととされています。
また一般的な意味として、ある人の身元などを保証する人のことを指します。
ここでは日本の民法による保証人、つまり主たる債務者が債務を履行しない場合に、代わりに保証債務を負う人について説明していきます。
保証人制度のなかには、保証人と連帯保証人があります。
次の章では保証人と連帯保証人の違いについて説明していきます。
3-1.連帯保証人と保証人の違い
連帯保証人と保証人の大きな違いは、その責任の広さです。
まず、保証人の場合、どの債務に対してどれだけの義務、具体的には金額や責任の範囲がその契約の最初に明確にされています。
しかし、連帯保証人の場合はその範囲に明確な決まりがないため、多くは主債務者と同じだけの責任を負わされます。
賃貸物件の契約の場合、連帯保証人はその物件を実際に借りている訳ではないにもかかわらず、実際に借りている契約者、つまり主債務者と同じだけの責任を負うケースが多いです。
例えば店子である主債務者が借りている部屋の設備を損傷した場合などは、貸主である債権者から、修繕、原状回復にかかる費用を連帯保証人に請求することができます。
次に、連帯保証人には催告の抗弁権がありません。
これは、債権者から債務について請求を受けた際、主債務者に先に請求してださい、と要求することができないということです。
また、連帯保証人には検索の抗弁権もありません。
これは、債権者の債務の回収の際、主契約者の財産から先に回収してください、と要求することもできないということです。
平たく言うと連帯保証人とは、実際に借金をしていないにもかかわらず、借金をした本人と同等の責任を負うことがある人です。
よく社会の教訓のひとつとして言われる、「連帯保証人にはなるな」という言葉があるのはこのためです。
主に中小企業対象の融資の局面において、この連帯保証人制度によるトラブルも少なくないため、2016年3月時点で民法改正のための動きがあり、国会で民法改正のための関連法案の一部が可決されています。
4.賃貸契約において借主以外に責任を負う人とは
さて、賃貸契約での連帯保証人は、契約者本人のようにその建物や土地の利用がなくても、その責務や賃料の支払いに際しては契約者本人と同じだけの責任を負うことになります。
ですので、先に述べたような、賃貸物件にてお一人で亡くなられた方がいらっしゃり、その部屋の原状回復に際して特殊清掃や遺品整理、リフォーム工事が必要となる際は、まずはその賃貸契約の連帯保証人にその費用負担や手続きの履行を貸主である大家から求めることになるでしょう。
それでは、貸主である大家から連帯保証人に連絡がつかない、または支払いや手続きの履行能力がない場合はどうしたらよいのでしょうか。
連帯保証人は賃貸契約に付随する関係者の一人ですが、賃貸契約と別に、お一人で亡くなられた方の関係者となりうる立場の人がいます。
それは、お一人で亡くなられた方の法定相続人です。
次の章では法定相続人について説明していきます。
5.法定相続人とは
法定相続人とは、亡くなった方の配偶者や子など、亡くなった方本人の財産を相続する権利をもつ人のことです。
その権利の範囲や取り扱いなどは民法に非常に仔細に定められているため、ここでは詳しくは割愛します。
注意すべき点としては、相続ではプラスの財産もマイナスの財産も等しく引き継ぎの対象として考えられていることです。
ですから、賃貸物件にてお一人で亡くなられた方がいらっしゃり、その部屋の原状回復に際して特殊清掃や遺品整理、リフォーム工事が必要となったケースなどでは、法定相続人がお一人で亡くなられた方本人の負債を引き継ぐ形で、特殊清掃の費用を負担する場合もあります。
一点、貸主である大家の視点にて注意しておきたいのは、この法定相続人の立場は所定の期間に所定の手続きにて放棄することもできるという点です。
賃貸契約の連帯保証人と異なり、血縁によって法定相続人は決定されます。
心情的には、血縁者の孤独死や孤立死に際して、法定相続人の立場を容易に放棄するとはもちろん考えにくいですが、現代では家族親族のあり方に多様なケースがあるため絶対とは言えません。
6.「孤独死」「孤立死」が発生したら、通報の後まずは連帯保証人に連絡を
通常、賃貸物件に限りませんが、誰にも気づかれずお一人で亡くなられた方が発見された場合、警察への通報が必要です。
これはその死亡に事件性があるかどうかを警察が調べる必要があるためですが、現場検証の後、警察の承諾があれば、お一人でお亡くなりになっていた方の部屋を片付けることができます。
その際の費用負担や手続きの履行、またお一人で亡くなられた方のご遺体の搬送や葬儀の手配など、貸主である大家が行う範囲を超えている事柄は多くあります。
また部屋の貴重品の所在など、大家が立ち入れない範囲、またはトラブルにつながりやすい事項も多いことでしょう。
そのため、「孤独死」「孤立死」が発生したら、通報の後まずはすぐ連帯保証人に連絡をとるのが良いかと思われます。
また、普段からできることとして、特に一人暮らしの賃貸契約の場合、その連帯保証人が日ごろから借主である店子と良好な関係、連絡を保っているかどうかを注意しておくことも重要です。
7.連帯保証人に求めてよいこと、連帯保証人となる人に求められること
ここまで、特に一人暮らしの場合の「孤独死」「孤立死」の発生について鑑みつつ、連帯保証人やその制度、周辺の関係者についてご説明してきました。
こういった非常時の対処も含め、借主である店子、また貸主である大家と良好な関係、連絡を保つことのできる連帯保証人が、賃貸契約の際は望ましいといえるでしょう。
8.「事故現場の連帯保証人に求めてよいこととは」まとめ
- 「孤独死」「孤立死」が発生したら、通報の後まずはすぐ連帯保証人に連絡をとるのが良いかと思われます。
- 一人暮らしの賃貸契約の場合、その連帯保証人が日ごろから借主である店子と良好な関係、連絡を保っているかどうかを注意しておくことも重要です。