【年間200件の事例】から学ぶ「孤独死対処方法」

孤独死現場を発見した際にすべきこと

発見

悩む
あなたは孤独死について知っていますか?
近年ニュースや報道で取り上げられることも多くある孤独死といった事態ですが、その実態はどのようなものだと考えていますか?

賃貸住宅の一室で孤独死という亡くなり方が起き、その後ご遺体の発見に時間がかかってしまうなどの場合も見られます。
住居用の賃貸物件をお持ちの方の中には、入居者による孤独死の事態の可能性を感じ、どうやって今後対処していこうかお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
もし、孤独死の現場を発見した場合、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
今回は、孤独死の現場を発見したときにすべきこと、孤独死の実態などについて述べていきます。
併せて、特殊清掃や遺品整理といった仕事の内容についても触れていきます。

1.孤独死の実態とは

まず、孤独死、または孤立死と呼ばれる事態の定義についてです。
孤独死とは、何かの事情で家族や親族、地域の近所の人々など、周囲の人との関係が疎遠になっていた人が、お一人で誰かに看取られることなく亡くなられる事態を指します。
その死の原因は様々ですが、一番多くみられるのは病気による突然死です。
浴室で容体が急変してそのまま亡くなられるケースや、自室でくつろいでいる際に帰らぬ人となるケースなど、様々な状況での死がみられます。
もちろん、事件・事故による死や、自殺などもこの孤独死の場合に含まれます。
どういった死因で亡くなる場合も、人生の最期を温かく見送られることなく、孤独に迎えるといった点ではとても悲しく痛ましいことと言えるでしょう。

こういった孤独死はやはり高齢者に多くみられます。
また大規模災害のあとに建設された仮設住宅内など、それまであった地域のつながりや周囲との関係が薄くなってしまったことにより起きてしまうことが多いようです。
高齢者の場合に対しては、毎日の弁当配達や新聞配達、定期購入の配達員、近所の人などが日ごろから声をかけたり、様子を気に掛けていくことにより孤独死を減らしていく取り組みも一部の行政では行われています。

孤独死の事態は、その死の痛ましさもさることながら、その後のご遺体が長期間放置状態となってしまうことにより、腐乱したご遺体が原因で住宅の壁や床の建材が傷み汚れたり、ご遺体の影響で臭いなどが部屋にしみついてしまうといった事態になり、より痛ましいこととなってしまう場合が少なくありません。
ご遺体が腐敗することにより、そこに害虫が発生したり、強烈な死臭が発生する事態は、とても悲しく悲惨なことです。
また害虫の発生や死臭の発生は、近隣の住民の生活に対しても影響を及ぼすため、居住用賃貸物件の持ち主にとっては別の意味でも心労の種となる出来事となってしまいます。
死臭は、人間の危機管理本能に訴えかける強烈な臭いとなるため、長期間その臭いにさらされることによって、食事がとれなくなってしまったり、臭いのしていないところでもフラッシュバックに悩まされたりすることもあります。
近隣の住民や賃貸の入居者の住民がこういった影響にさらされてしまう事態を防ぐことは、住居用賃貸物件の持ち主によって必須であるといえるでしょう。

また、孤独死の中で、近年特に問題とされているのが、いわゆるゴミ屋敷化した住居での孤独死です。
住居がゴミ屋敷する背景には、セルフネグレクトと呼ばれる自己の身の回りへの極端な無関心や放棄が一つの原因としてあります。
これは加齢や、脳の機能低下、脳の病気などにより、身の回りを整えることに無関心になってしまう状況です。
部屋がゴミ屋敷化していく具体的な状況としては、例えば生活ゴミを出すのをためらっていった結果、臭いが気になるほどゴミがたまってしまう場合や、自分の身のまわりの整頓や清掃がおっくうになった結果、家の中が荒れ果ててしまうケースなどが見られます。
他にも、不用品をつい集めてしまう収集癖や、不要なものと必要なものの判断ができなくなってしまうような認識能力の低下など、いろいろな要因がゴミ屋敷の発生にはかかわっています。
自室がゴミ屋敷しているだけでは周囲に迷惑ではない、といった言説もありますが、火災の発生のしやすさや、ゴミの臭いが周囲にもたらす影響などを考えると、とてもそのまま放置していてよいといった状況ではないでしょう。

さらに、ゴミ屋敷化した住居で孤独死の事態が起きた場合、そうでない場合よりも現場の片付け作業がより大規模なものになります。
現場にゴミが山のようになっていることによって、遺品整理の作業が難航することと、ご遺体の影響以外にもゴミの影響で建材が傷んだり、臭いがしみついてしまっていることがあります。

注意

ゴミ屋敷化しやすい方の共通点として、近所付き合いが少ない方や挨拶自体あまりしない方等が多いと言われており、そのような方が部屋で亡くなった場合は、他の方よりも発見が遅れやすい傾向があるようですので注意が必要です。
実際に、死後5年程発見されなかったような事例もいくつかあります。
家賃や光熱費が引き落としされている場合等も気付かれにくいので同じく注意しておくと良いでしょう。

また、通常の場合でも、孤独死はその死に周囲が気づくのが遅くなりやすく、ご遺体由来の体液のしみだしなどの原因で、住居の建材が痛んだり、死臭と呼ばれる強烈な臭いが部屋にしみついてしまう場合があります。
夏のような蒸し暑い時期ですと、死後2~3日で死臭や腐敗が進むと言われています。
こうしたご遺体由来の影響は、一般のハウスクリーニングや清掃で取り去ることが難しいため、特殊清掃とよばれる分野の専門業者に依頼するのがベストでしょう。

特殊清掃とは、主にご遺体の影響のあった場所の片付け、清掃、臭いの消臭を行う仕事です。
さらに、先に述べたようなゴミ屋敷の清掃や片付けについても取り扱っている業者が多くあります。
他にも、火災現場の片付けや現状復帰、火災臭の消臭や、動物の過剰飼育がおこなわれていた場所での排泄物臭の消臭、堆積した動物の排泄物の処理、清掃など、およそ通常のハウスクリーニングでカバーできない箇所の清掃、片付けに関して扱う業種となっています。

孤独死の事態は現在年間3万人ほど発生するといわれており、現代の日本では特殊清掃は世の中にとって必要不可欠な仕事となっています。
海外のニュースなどにも、世界で一番悲しい仕事として取り上げられています。
孤独死の事態の収拾に、こういった業種の人々が力を発揮していることはあまり知られてはいませんが、重要なことです。

2.孤独死現場を発見した際にすべきこととは

孤独死が発見される場合の多くは、臭いや害虫などの苦情により、警察や住居物件の所有者がやむをえず合鍵で戸内に立ち入った際などです。
また、便りがないことに異常を感じた家族や親族、訪問時に反応がないことに異常を感じた周囲の人などが家の中を見たり、立ち入ったりする場合もあるでしょう。

では、所有している住居用の賃貸物件などで、様々な事情から、孤独死と思われる現場に遭遇してしまった際は、具体的にどうしたらよいのでしょうか。

注意

まず必ずしなければならないのは警察への通報です。
現場の様子に驚いたり、ご遺体を発見したショックで気が動転していても、ご遺体を動かしたり部屋の調度品に触れたりしてはいけません。
病院以外で人が亡くなった場合、警察によって事件性がないかなどの鑑識や調べが行われるのが通常です。
そのため、警察が来て現場を調べる前に、むやみに現場の物品やご遺体を動かしたりしてはいけません。
場合によっては事件性を疑われ、証拠隠滅の疑いを警察にかけられてしまう原因にもなるので、現場の物品やご遺体には触れずに、まず警察に連絡することが重要です。

現場が体液や血液で汚れている場合、また強い臭いがある場合など、一刻も早く現場の片付けに着手したい場合もあるでしょう。
その場合は、特殊清掃の専門業者にできる範囲での見積もりをまず依頼することも可能ではあります。
もちろん、特殊清掃業者でも、警察の鑑識や調べが済む前に現場に入ることはできませんから、概算での作業見積もりとなります。

孤独死の現場の場合、ご遺体の影響を取り去る特殊清掃のほかに、調度品や家具などの日用品を適切に処分処理する遺品整理も行わねばなりません。
多くの特殊清掃業者が、遺品整理についても請け負っています。
遺族や関係者がいる場合、遺品整理を自分たちで行うか、業者に依頼するかは場合によりますが、処分する品が多い時など、すべて一括して任せてしまうのも一つの手です。
遺品整理は、遺族が行う場合は特に気持ちが沈みやすい作業となります。
遺族が故人を送り出す手続きはそのほかにも葬儀や火葬、そのための各機関への届など、いろいろな用事があるため、人手が足りないときなどはやはり遺品整理を業者に任せる、といった選択が見られます。
また、特殊清掃が必要なほど部屋にご遺体の影響がある場合や、先述したように部屋がゴミ屋敷化している場合など、遺族による遺品整理が困難なこともあります。
遺族が部屋に立ち入れる程度への清掃と消臭を行うだけに特化した、パック料金式の特殊清掃のプランもあるので、状況に応じて検討するとよいでしょう。

では、業者が行う遺品整理の実際は、どのようなものでしょうか。
遺品整理では、亡くなった方の持ち物を3種類に分類して処理します。

  1. 1つ目は貴重品や思い出の品など、遺族の手元に置いておき管理するものです。
    銀行の通帳や印鑑、現金、いつもつかっていたメガネや思い出の写真アルバムなどがこちらにあたるでしょう。
  2. 2つ目に、リサイクルショップでの買取や再利用が望める品です。
    未開封の贈答品や家電、大型の家具、食器類などがこちらにあたるでしょう。
    本やCD、故人のコレクションにあたるものも含まれます。
  3. 3つ目に、廃棄物として処分する品です。
    使用感の激しい衣類や、リサイクルショップでも買取の対象になりにくい古い物品などが含まれます。
    遺品整理を行う業者は、一般廃棄物処理の許可を持っていたり、許可を持っているほかの業者とつながりがある場合がほとんどです。
    そういったルートで廃棄物として処理されることとなります。
MEMO

遺品整理も特殊清掃も、先に述べたように、孤独死の事態が多くみられる日本では必要不可欠な仕事です。
孤独死の事態を発見した際には、こういった業者の存在に助けられることもあるでしょう。

3.「孤独死現場を発見した際にすべきこと」まとめ

  • 孤独死とは、周囲の人から縁遠い状態の方が、お一人で看取られることなく亡くなってしまう事態のことです。
  • 特殊清掃は、建材や建物へのご遺体の影響を取り去る作業です。
  • 孤独死現場を発見した場合は、現場を動かすことなく警察にまず連絡することが大切です。