【年間200件の事例】から学ぶ「孤独死対処方法」

近隣から悪臭で苦情がきた場合の対処方法は

大家さんとトラブル

1.賃貸物件にて、悪臭の苦情を受けて困惑していませんか?

賃貸物件の店子から、突然、「隣室から悪臭が漏れてきて困っている」「ハエや虫がいつもより多く見られるようになって、出所が隣室のようである」などといった苦情が寄せられて困惑していませんか?

苦情

また、近所の建物の別の住人から同様の苦情が寄せられる場合もあるでしょう。
単に悪臭といっても、ごみやある種の食材の臭いは、そのものを処分してしまえばすぐなくなるはずです。
一日中続いている強い臭いの苦情を受けた場合、大家としてある心の準備をしておかねばならない場合もあります。
このページでは、悪臭の苦情を受けた場合の対処方法について説明していきます。

2.さまざまな可能性を考えた場合にできること

では、悪臭の苦情を受けた場合、予測される事態とはどういったものになるでしょうか。
独特の腐敗臭や、ハエやウジ、ゴキブリなどの害虫が大量発生している事態において、考えられるのは住民の「孤独死」「孤立死」の可能性です。
「孤独死」「孤立死」とは、何らかの理由で地域コミュニティや家族、親族から切り離された状態にあった人が、誰にも看取られることなくお一人で、病気や事故、または事件や自殺により最期を迎えられる場合を指します。

一人暮らしのお年寄りにこういったお亡くなり方をされる方は多く見られ、社会問題のひとつともなっています。
また、若い方の一人暮らしであっても、急病や自殺などによってお一人で亡くなられる方もいるため、核家族化が進む現代では誰でもその関係者となりうる可能性があります。

考える

こういったお亡くなり方をされる方がいらっしゃることは、とても痛ましいことですが、その死後に誰にも発見されず、ご遺体が放置されることによって、そのご遺体のあった現場はさらにさまざまな憂慮すべき事態を引き起こしてしまいます。
これからその事態について説明していきます。
通常、死後誰にも発見されることなく長い期間が経ってしまったご遺体は、季節や時期にもよりますが、どんどんと腐敗が進むこととなります。
夏の暑い時期などは特に注意が必要でしょう。
また寒冷期であっても、室内の暖房器具が稼動していた場合や、こたつの中に足をいれたまま亡くなった場合など、急速に腐敗が進むこともあります。
そして、ご遺体の腐敗に伴い、ご遺体由来の血液や体液によって住居の壁材や床材が損傷を受けたり、隣り合った居室や階下の居室に影響を及ぼします。
また、ご遺体にウジやハエ、ゴキブリなどの害虫が大量発生することにより、その影響が近隣にも及ぶ場合があります。
さらにご遺体からは、腐敗に伴って独特の強烈な臭い、いわゆる死臭が発生するため、近所の住民に多大な迷惑をかけてしまうこともあります。
こういった影響を及ぼす事態は、時間が経過してご遺体の腐敗や害虫の発生が激しくなるほどに深刻になるため、事態が疑われる場合は一刻も早く対処をすることが肝心です。
単に臭いの苦情として片付けず、疑わしい苦情が寄せられた際には、「孤独死」「孤立死」の可能性を心の隅において対処する必要があるでしょう。

3.悪臭の発生に対して大家として取れる対処

では、悪臭が発生している場合、大家として取るべき対処の順番について説明します。

パトカー

  1. まずは、部屋の借主の連帯保証人や、親族に連絡して現地に来てもらうことです。
  2. もしそれがスムーズにいかない場合、警察に連絡して状況を確認してもらうことが必要です。
    大家といえど、管理キーなどを使用して勝手に部屋に入ると、後々事態が却って混乱する場合があるので良くありません。
  3. まず家族や親族、それができない場合は警察、やむを得ず鍵を開ける場合も必ず警察に同行してもらって部屋の中を確認するようにしましょう。
  4. また、害虫や臭いの発生を知らされていながらそれを放置するのも良くありません。
    場合によっては貸主側の管理責任を問われ、隣室や階下の住人の引越し代やクリーニング代を賠償しなければならなくなる場合もあります。
    万が一の事態はもちろん起きないほうが良いのですが、悪臭や害虫の発生が起きた時点で、ある程度事態を予測して適切に対処に当たることが必要といえるでしょう。

4.ご遺体が発見されてから行うこと、また悪臭を完全に除去するには

不幸にも部屋の住人が死亡しているのが発見された場合、まずは警察の鑑識による鑑定が行われ、その死の事件性の有無について確かめられることとなります。
事件性がないと判断され、ご遺体を運び出した後、警察の許諾があって初めて部屋の原状復帰に関する作業が行われることとなります。
このとき、警察の許可なしにご遺体のあった現場を片付け始めてしまうと、場合によっては証拠隠滅などの罪に問われることにもなりかねません。
必ず許可を得てからご遺体のあった現場の原状復帰に取り掛かることです。

その死後しばらくしてからご遺体が発見されるような事態、また今回取り上げているように悪臭がすでに近隣にまで広がっている場合は、通常の賃貸物件の退去時のようなハウスクリーニングだけでは到底その臭いを取り去ることはできません。
また、ご遺体由来の血液や体液の染み出し、害虫の発生のためおきる二次感染の危険性もあるため、ご遺体のあった部屋の清掃に専門知識を持った、「特殊清掃」とよばれる分野の専門業者に依頼するのが良いでしょう。
特殊清掃の業者は、ご遺体由来の血液や体液によって建物の壁材や床材におこる影響をほぼ完全に除去するだけでなく、オゾンを利用した消臭機材や特殊な薬剤を用いた方法で独特の死臭について除去作業を行うことができる業者を選ぶことが肝心です。

場合によってはご遺体のあった部屋の一部や全体を清掃だけではなくリフォームする必要がある場合もありますが、まずは独特の臭いを完全に近く除去することによって、かなり影響を軽減することができます。

また、多くの場合、発生しているご遺体由来の独特の臭いは、家財道具や調度品にもしみついてしまっていることがあります。
特殊清掃にあわせて遺品整理も行ったほうが良いでしょう。
多くの特殊清掃業者は、併せて遺品整理についても請け負っています。
相続の関係などから、遺族が特殊清掃や遺品整理を渋る場合もありますが、臭いや害虫の発生を一刻も早く食い止めるためにもなんとか作業を開始するよう、協力を仰ぐことが必要です。

特殊清掃は、清掃という名称ではありますが、その内容から少なくとも数万円、多いと数十万円単位の多額の費用がかかる作業になります。
ご遺体のあった部屋に入る際にも二次感染対策や臭いの防御が必要ですし、血液や体液の染み出した汚れを落とすには特殊な薬剤を用います。
そのため、部屋の状況や広さ、ご遺体由来の影響の範囲などによりかかる費用が異なってくるのが普通です。
作業前にしっかりと見積もりを提示して、迅速に作業に当たれる業者を選ぶことが肝心です。

特殊清掃の作業の手配は、連帯保証人や法定相続人などの親族にその能力がある場合はそちらに任せていくことになりますが、その責にあたる人がいない、遠方や病気、意思がないなどの理由ですぐに作業の手配ができない場合、見積もり金額を連絡した上で大家が作業手配に当たる場合もあるでしょう。

MEMO

悪臭の苦情に端を発し、その後に特殊清掃が必要となるような事態では、放置しておくことによって事態が悪化することはあれど、好転することはまずありません。
積極的に大家として動き、早め早めに事態の収拾にあたることが必要といえるでしょう。

5.特殊清掃、遺品整理を行う場合の注意点

賃貸物件の居室でお一人で亡くなった方がいらした場合に、病死の場合などでは自然死と扱われ、法律的に次の住人にその事実を告知しなければならない明確な決まりはありません。
しかし、うわさが立ってしまったことで隠し切れなくなり、いわゆる事故物件として扱わざるを得なくなる場合もあります。
そのため、物件のそばでその原状復帰やお亡くなりになった方についての情報を大声でやりとりしないことや、献花や盛り塩を目に付くところにしないなどの配慮も必要です。
他にも供養の儀式は室内で、あまり大きい音を立てず行ってもらうなどの処置があるでしょう。
このような事態は、該当する自分たちの賃貸物件でなく、近隣の賃貸物件、建物や住民にも影響することだけに、なるべく目立たないうちに事態を処理する配慮もしたほうがよいでしょう。

また、本人の死を知らされた親族は気が動転している場合が多く、些細なことでも記憶違いや考え違いを起こしがちです。
身内の死の凄惨な現場を見てしまうことによって、普段通りの状態ではいられなくなってしまう人も多いでしょう。
大家が代わって特殊清掃や遺品整理の手配をする場合など、その費用の負担や実施の取り決めについては面倒でも必ず書面に残し、内容確認をするようにしましょう。
後々の金銭トラブルを互いに防ぐ意味でも、明文化することは大切です。

6.「近隣から悪臭で苦情がきた場合の対処方法は」まとめ

  1. 近隣から悪臭で苦情が来た場合に、大家として対処すべきことは、まずは連帯保証人をはじめとした借主の親族への連絡です。
  2. 親族が遠方や連絡が困難な場合は、警察に連絡することです。
  3. 大家だけで管理キーなどを使って部屋に入ることは良くありません。
  4. どうしても部屋に直接入るほかない状況になった際は、かならず警察同行の上、部屋に入るようにしたほうがよいでしょう。

また、警察による鑑識が終わったあと、ご遺体のあった部屋の片付けに関しては、特殊清掃を行うことができる専門業者に依頼するのがよいでしょう。