賃貸経営をしている大家さんの中には、
孤独死現場に遭遇してしまうこともあるかもしれません。
孤独死がお持ちの賃貸で起こった際に、
どのように現場の対応をすれば良いのかわからないといったご相談はよく受けます。
しかし、現場の対応以外にも、気をつけて置かなければいけないことがあります。
それは、「風評」、つまり「悪い噂」です。
1.孤独死は仕方がないこと
人間は生きている内にやがて死を迎えます。
生命には必ず終わりが来ますので、死んでしまうことは仕方がないことです。
可能であれば、愛する家族やお世話になった人々に囲まれて最期の時を迎えたいものですが、様々な事情や不意の事故などで孤独に最期を迎える人々もたくさん居ます。
孤独死は発見が遅れやすいので、死後から数週間、数ヶ月が経ち、
異臭や汚れがきっかけで発見されることも多くあります。
それが原因で、孤独死はやはり悪い印象を持たれてしまいがちです。
そんな孤独死の悪い印象が、回りまわって大家さんの悪い噂や賃貸の悪い噂になってしまうこともあります。
2.風評のきっかけは防げない。孤独死から風評が広がるまで
風評のきっかけは孤独死が起こることなので、
人が人である以上、防ぐことはできません。
きっかけとなる孤独死が起こってから、
大家さんや賃貸物件の風評がひろまるまでには段階があります。
- 事実の拡散
まずは孤独死が起こったという事実の拡散です。
そもそも孤独死は異臭が原因で近隣住民の方々からのご連絡に寄って発見されることもありますし、孤独死の現場を大家さん自身が発見する場合ですと、孤独死の事態を発見した際に警察へ連絡をすることとなりますので、いずれにせよ周囲に孤独死が起こったという事実が広まります。
その後の特殊清掃や遺品整理の作業もありますので、事実の拡散は防げません。
むしろ、事実を隠そうとしてしまうと場合によっては怪しまれますので、自ら広める必要は全くございませんが、自然に広まることが普通です。 - 風評の拡散
事実が拡散した後に、風評の拡散が始まることがあります。
住民の方々が理解のある方々で、仕方がないことと割り切っていただければ良いのですが、死後時間が経ってから発生する独特の異臭や汚れにいい印象を持つ人はめったに居ないでしょう。
孤独死が起こった事が発覚してすぐに、隣人の方は気づき、嫌な気分を感じる事となります。
そして、周りの人や友人に「自分の住んでいるマンション(アパート)で孤独死が起こった」という話をすることになります。
それはつまり、「マンション(アパート)には良い印象を持てない」と思わせることとほとんど同義です。
そこから、「そういえばあのマンション(アパート)のあの一室で、一人で亡くなられた方がいるらしい」という噂が広まり始めます。
すなわち、マンションやアパートの悪い噂が広がり始めてしまうのです。 - 被害の拡散
孤独死があったと聞いて、当然、いい思いをする人は少ないと思いますので、
マンション(アパート)に対する印象も悪くなってしまいます。
その部屋や建物に近づくのを避ける人も出てくることでしょうし、
孤独死が起こった部屋の隣の部屋の人も、悪い気分から引っ越してしまうかもしれません。
隣の人だけではなく、近隣物件の人々からの目線を気にして引っ越しを決めてしまう人も出てくることが考えられます。
悪い噂が広まった結果、それが被害として出始めるのです。
孤独死によってもたらされる損失は、現場の処理にかかる損失だけではなく、
そこから発生しうる風評によってもたらされる損失もあるのです。
上記のような風評が起こってしまうことも仕方がないことです。
では、このような風評はどうにもできないのでしょうか。
風評をなくすことは難しいでしょうが、事前にできることと、
事後の対応次第では軽減をすることが出来ます。
3.大切なのは事前の準備と事後の対応
文頭の通り、孤独死を防ぐことは難しいです。
さらに、風評をゼロにすることも難しいでしょう。
したがって、孤独死が起こってしまったことを想定して事前に準備をしておくことと、
孤独死が起こった後の対応を丁寧に行うことが大切です。
地震に対する心構えのようなものと近いかもしれませんね。
地震もいつかは絶対に起こってしまうので、地震に備えることと、
起こってしまった際にはどのように対応していくかが大切です。
4.事前にできる準備
事前にできる準備としては例えば下記のようなものがあります。
- 孤独死保険に入る
孤独死保険は、万が一孤独死が起こってしまった際に原状回復費用や家賃損失の一部を補償してくれるサービスです。
1戸室あたり少額の費用で加入できる保険も増えてきています。
死亡事故の経験がなくても加入されている大家さんも多いようです。 - 定期的に住民の方と連絡を取る
何か異変があった際には連絡は必ずしましょう。
例えば、家賃や光熱費の滞納がある、しばらく姿を見ない、家の郵便受けが溢れかえっている、などです。
異変があることに気づくためには普段の様子を知っていなければいけませんので、普段から関わりをもつようにしたり、生活スタイルを把握しておいたりすることが重要です。
また、特に異変がなかったとしても2,3ヶ月に一度は連絡を取るようにしておくべきです。 - 居住者の連帯保証人や相続人と連絡をとっておく
孤独死が起こった場合の最初の負担責任者は連帯保証人となりますが、連帯保証人に連絡がつかないということがよくあります。
理由は様々ですが、既に死亡している場合や引っ越し等が考えられます。
連絡が取れない場合は孤独死が起こった際の原状回復費用が請求できなくなってしまいます。
そもそも請求ができなくなることは防ぎたいですし、連絡が取れないことにより原状回復が遅れ、周囲への被害が大きくなることを防ぐためにも連帯保証人にも定期的に連絡をとり、いつでも連絡が取れる状態にしておくべきです。
相続人ともいつでも連絡が取れるようにしておいたほうが、いざ孤独死があった際にスムーズに対応でき、風評の広がりを防ぐことができるでしょう。
どの方法も非常に細かく地道ではありますが、いざという時のために備えておきましょう。
5.事後の対応
事後の対応として推奨ものとして、例えば下記があげられます。
- 不必要に広めないようにする
上述の通り、自然に広まってしまうのは致し方ないことですが可能であれば広めないようにしたほうが、風評による被害は防ぐことが出来ます。
情報が周りの人に漏れないようにするために、例えば遺族や連帯保証人の方や特殊清掃業者とのやり取りはなるべくひと目のつかないところで行うべきです。
周りの人も聞きたがらない情報でしょうから、内密にしたほうがお互いに幸せです。 - 特殊清掃等の作業をなるべく早めに行う
孤独死被害が大きく、清掃が必要な場合に通常の清掃では異臭や汚れを除去できない場合が多いので、薬剤の散布やオゾンの脱臭機などを用いた特殊清掃を行う必要があります。
こうした特殊清掃業者は多いので、どの業者にするべきか悩みがちですが、そうやって悩んでいるうちにどんどん被害は拡大していきます。
現場の被害だけでなく、風評による被害も拡大してしまいます。
ある程度考え、信頼できそうな業者を見つけたらなるべく早く清掃を依頼するようにするべきです。 - 各関係者への対応は丁寧に行う
孤独死を発見した際にはどうしても焦ってしまうものです。
警察に連絡もしなければいけせんし、特殊清掃のことも考えながら周囲の住民への対応をして、さらに連帯保証人にも連絡をしなければいけません。
パニック状態で各方面への対応をしてしまうと、それぞれの人への対応が雑になってしまう可能性があります。
雑な対応をされると、その後の印象が悪くなりますので、風評被害の拡大につながりやすいです。
また、風評被害だけでなく、家主が損害を負担する割合が増えてしまうこともあります。
焦らずに丁寧に、真摯に対応をしていくことが大切です。
6.「孤独死等の事故物件での大家さんの風評対策」まとめ
- 孤独死が起こってしまうことは仕方がないことです。
- そして、その風評がおこってしまうことも仕方がないことです。
- それを理解した上でどのような準備や対応をしていくことが大切です。